ハイドン・フィルハーモニー


ヨーロッパの名門・エスターハージーの至宝


ハイドン・フィルハーモニー Haydn Philharmonie

1987年、指揮者アダム・フィッシャーのもと、ウィーン・フィルとハンガリー国立フィルのメンバーによって設立。鉄のカーテンが崩壊する前の当時、「オーストリア、ハンガリー両国の選りすぐりの音楽家を集め、ハイドンの作品をともに演奏することで音楽的に国境を克服しよう」というフィッシャーの考えのもと、一流の演奏家たちが集合した。

 2015/16年シーズンからは、ニコラ・アルトシュテットが芸術監督を務め、オーケストラの名称も「ハイドン・フィルハーモニー」とだけ表記されるようになる。16/17年シーズンは、エスターハージー宮でのハイドンの《天地創造》公演やオーストリア放送協会によるベートーヴェンの《フィデリオ》の生中継、7公演におよぶ中国ツアー、マルク・ミンコフスキー、ミッコ・フランクなどの指揮者や、アレクサンダー・ロンクヴィッヒ(ピアノ)、フランソワ・ルルー(オーボエ)、シャロン・カム(クラリネット)ら、いまもっとも注目を集める指揮者・ソリストとのウィーンをはじめヨーロッパ各地での共演が、特筆すべき活動となった。

 本拠地はアイゼンシュタット、エスターハージー城内のハイドン・ザール(ハイドンが多くの曲を生み出した場所)に置かれている。オーケストラは、ハイドンがエスターハージー城の音楽監督を務めていた当時より少し多い45名で構成され、ハイドンおよび同時代の作曲家による作品、ロマン派、現代作品、ハイドンのオペラ、またアイゼンシュタットで行われるハイドン・フェスティバルを忠実に再現したプログラムによるコンサートで、中央ヨーロッパにとどまらず、世界中の聴衆を魅了しつづけている。

 ウィーンのコンツェルトハウスや楽友協会、ブダペスト春の音楽祭、BBCプロムス(ロンドン)、モーストリー・モーツァルト・フェスティバル(ニューヨーク)など、多くの国際音楽祭にも招かれ、さらに、オーストリア、ハンガリーをはじめヨーロッパ各国、アメリカ、日本でのツアーではつねに高い評価を受け、世界で唯一無二のハイドンオーケストラとしての地位を確立した。

 1987〜2001年ハイドンの交響曲全曲をニンバス・レコードにて収録。この中の第40〜54番のレコーディングは、グラモフォン誌の「年間最優秀賞」の栄誉に輝いた。2004年よりダブリングハウス&グリムにてサラウンド・サウンド技術を駆使したハイドンの《ロンドン交響曲》の再収録に取り組む。このシリーズの最初の2つのリリースは、それぞれ2006、2008年の「エコー・クラシック賞」を受賞。グラモフォン誌の「年間最優秀賞」を再度受賞した。

 ハイドン・イヤーであった2009年、エスターハージー城におけるハイドン没後200年記念《天地創造》演奏会の模様は世界各国へ中継放送され、(日本ではNHKが放映)さらなる注目を浴びた。11、12月の日本ツアーのほか、ウィーン・コンツェルトハウス、パレス・オブ・アーツ(ブダペスト)、ルクセンブルク・フィルハーモニー音楽堂、国立音楽堂(マドリード)他に招かれての演奏、またスイス、ドイツでのツアーなどいずれも好評を博した。

 

エンリコ・オノフリ(首席客演指揮者)Enrico Onofri

(Principle Guest Conductor/Italy)

 エンリコ・オノフリはイタリアのラヴェンナ生まれ。ヴァイオリン教育を受けている頃から、古楽界の名門 ラ・カペッラ・レイアル・デ・カタルーニャの創設者であるジョルディ・サバールに依頼され、コンサートマスターとして入団している。またイタリアの古楽アンサンブル イル・ジャルディーノ・アルモニコのコンサートマスター兼ソリストを23年にわたって務めたほか、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスやコンチェル・トイタリアーノなどで、定期的にヴァイオリン奏者としても活動した。

オノフリはまた、指揮者としても長年に渡りヨーロッパ、カナダ、そして日本の著名な音楽祭で大成功を収め、2000年にはアンサンブル・イマジナリウムを結成、指揮者兼ソリストとしてコンサートを行っている。

 客演指揮者としては、ベルリン古楽アカデミー、オルケスタ・バロッカ・デ・セビーリャ、カメラータ・ベルン、ルツェルン音楽祭、バーゼル室内管弦楽団、チパンゴ・コンソート、ターフェルムジーク・バロック管弦楽団、フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団などに招かれている。2019年からはハイドン・フィルハーモニーの首席客演指揮者に就任した。

 そのほか多くの主要コンサートホールで演奏を重ねるほか、チェチーリア・バルトリ、ニコラウス・アーノンクール、グスタフ・レオンハルト、ラベック姉妹、クリストフ・コワンなどの著名なアーティスト達とも共演している。

CDではテルデック、デッカ・レコード、ソニーアメリカなどのレーベルから出ているディスコグラフィーの多くが、賞を受賞している。

 現在は、イタリアのパレルモにあるコンセルヴァトーリオ・ベッリーニで、バロックヴァイオリンと古楽の奏法を教えている。また、定期的にヨーロッパ、日本、そしてニューヨークのジュリアード音楽院でマスタークラスを開催。ヨーロッパ連合バロック管弦楽団の指導者であり、指揮者でもある。

 

 

 

ニコラ・アルトシュテット(指揮/チェロ独奏)Nicolas Altstaedt

(Conductor, Violoncello/Germany)

同世代の音楽家の中でもっともエキサイティングで成功している若手アーティスト。また、ソリストであり指揮者でもあるという、現在の音楽界が要求するマルチアーティストとしても、バロックから現代にいたるレパートリーで観客を魅了する。

 指揮者としては、2018年6月のハイドン・フィルハーモニーを率いての来日をはじめ、スコットランド室内管弦楽団、ベルギー国立管弦楽団、香港シンフォニエッタ、レ・ヴィオロン・デュ・ロワでタクトをとり、ソリストとしては、2017/18年シーズンでは、ヘルシンキ音楽祭でエサ=ペッカ・サロネン作曲指揮で新しいチェロ協奏曲のフィンランド初演を果たし、続いてフィルハーモニア管弦楽団にも同曲でデビュー。以後ヨーロッパやアメリカでの有名オーケストラとのツアーを経て、2019年には読売日本交響楽団との共演も予定されている。

 一方はドイツ系、もう一方はフランス系にルーツを持つ家庭で1982年に生まれた彼は、ギドン・クレーメルらと活躍した高名なロシア人チェリスト、ボリス・ペルガメンシコフの最後の弟子のひとりとしてベルリンで学び、その後エバーハルト・フェルツのもとで研鑽を積む。

 いくつかの国際音楽コンクールで優勝を果たした後、2009年ボルレッティ・ブイトーニ財団賞を受賞。2010年初めには、クレディ・スイス・ヤング・アーティスト賞に輝き、ルツェルン音楽祭において、シューマンのチェロ協奏曲をグスターヴォ・ドゥダメルが指揮するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と共演する栄誉が与えられた。

 2010年9月初めより、アルトシュテットは数少ないBBCの新世代アーティスト・スキームの仲間入りをしている。この賞には、イギリスの主要な音楽祭やコンサートホールにおけるBBC交響楽団との共演が含まれている。

 2012年からは、ギドン・クレーメルのすすめを受け、ロッケンハウス室内楽フェスティバルの新芸術監督としてクレーメルの後継となった。

 その後の活躍は、N・マリナー、N・ヤルヴィ、R・ノリントン、D・ラッセル・デイヴィス、A・フィッシャー、V・フェドセーエフ、V・アシュケナージやA・ボレイコの指揮のもと、トーンハレ管弦楽団、ウィーン交響楽団、シモン・ボリバル交響楽団(旧ユース・オーケストラ)やバンベルク交響楽団、メルボルン交響楽団、ニュージーランド交響楽団、ベルリン放送交響楽団、モスクワ放送交響楽団などとの共演があげられる。

 2011から2012年は、J・テイト指揮トーンキュンストラー管弦楽団との共演で、ウィーン楽友協会にデビューし、ドイツ連邦ユース・オーケストラとはドイツおよび中国の全土ツアーを行った。A・デービス、M・ブラビンズ、M・ピンチャーがそれぞれ指揮するBBC交響楽団、また、オークランド・フィルハーモニー管弦楽団、ジャン=クロード・カサドシュ指揮リール国立管弦楽団などとも共演した。

 そして2014年、ハイドン・フィルハーモニーの芸術監督をアダム・フィッシャーから継ぐ。

 アルトシュテットは、現代の作曲家への深い共感も持ち、クルターグ・ジェルジュ、イェルク・ヴィトマン、モーリッツ・エッゲルト、ソフィア・グバイドゥーリナ、トーマス・アデス、HKグルーバー、トーマス・ラルヒャー、ラファエル・マーリンとファジル・サイら作曲家とのコラボレーションも多い。

 室内楽において頻繁に共演するプレイヤーは、アレクサンダー・ロンクウィヒ、ホセ・ガヤルド、ペッカ・クーシスト、バルナバ・ケレメン、ユーリ・バシュメット、エベーヌ四重奏団など。また、ニューヨークのリンカーンセンター室内楽協会では数少ないヨーロッパ人メンバーとして2009〜2012年シーズンを務めた。

 CDにおいても、CPE・バッハのチェロ協奏曲を録音し、2017年にBBCミュージックマガジン誌の「協奏曲賞」を受賞するなど、コンチェルトのレコーディングではつねに高い評価を得ている。

 使用楽器は1760年頃のジュリオ・チェーザレ・ジッリ。 

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